若者居住支援を普及させる支援事業~実施報告書

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2021年度独立行政法人
社会福祉医療機構社会福祉振興助成事業

「若者居住支援を
普及させる支援事業」
【実施報告書】


CONTENTS
1 若者居住支援を普及させる事業の事業概要……………………… 1
2 ユースハウスナビ事業………………………………………………… 2
3 ユースサポートハウス事業………………………………………… 3
4 利用者属性… …………………………………………………………… 6
5 支援事例… ……………………………………………………………… 8
6 ユースサポートハウス利用者アンケート… …………………… 10
7 ジョブトレ… ………………………………………………………… 15
8 ユースハウスナビ・ユースサポートハウス事業の成果……… 16
9 居住支援法人・不動産会社・保証会社・管理会社・支援団体・
  自治体・自立相談支援機関員向け研修会……………………… 17
 研修会の成果………………………………………………………… 26
 終わりに… …………………………………………………………… 28
若者居住支援を普及させる
事業の事業概要
(1)事業概要
①ユースハウスナビ事業(若者向け居住支援相談窓口の開設)
●入居のための支援
●未成年者への住居の借り上げ支援
●入居後の見守り支援
②ユースサポートハウス事業
●居宅場所を提供しての生活訓練・生活支援・就労支援の実施
●食材、生活消耗品、お弁当等の提供
●ジョブトレの実施
③研修会の開催
●居住支援法人、不動産会社・家主・保証会社・管理会社・支援団
体、自治体、自立相談支援機関向け研修会の開催。(札幌市)
(2)事業実施期間
2021年4月1日〜2022年3月31日
(3)対象年齢
  15歳から39歳までの方
(4)事業実施体制
事業責任者 1名
事業主任  1名
相談支援員 1名 
生活支援員 4名

2 ユースハウスナビ事業
(1)事業目的
●住宅確保が難しい若者の住宅確保を目的に、不動産会社・保証
 会社・家主と連携しながら住宅確保支援を行う。
●居宅生活後の生活破綻の防止。
(2)事業内容
●若者向けの住宅確保支援及び継続的な訪問、見守りを実施。
(3)ユースハウスナビ事業利用の流れ
①本人・関係者からの連絡
②事業説明
③状況確認【面談】
④サービス利用申し込み
⑤サービス利用開始

3 ユースサポートハウス事業
(1)事業概要
 様々な理由で「自立(自己実現)」が困難な状況にある若者を対象
に収入状況・生活能力・生育環境を考慮しながら、居宅場所、食材
を提供し、相談支援、生活訓練、就労支援を実施。
(2)定員 
 3名(令和4年2月から4名)
(3)ユースサポートハウス利用の流れ

(4)ユースサポートハウス支援内容
 居宅場所を提供し、生活習慣の改善・一人暮らしに向け、個々の段階
に応じた生活訓練・就労支援を実施。「家賃や生活費」を支払う習慣を
身につけるため、段階的に利用料を徴収した。
※ユースハウスナビ事業の活用
ユースサポートハウスの卒業者や一人暮らしを開始した若者についても、ジョブト
レへの参加など孤立防止・生活破綻防止に向けた支援を行なった。

(5)ユースサポートハウス居室
 札幌市東区に、アパートタイプの個室を3部屋設置

5 支援事例

──20代・女性
 小学校2年生の時に両親が離婚。小学校6年生の時に一緒
に暮らしていた母親が再婚した。その後、中学生の時に、母
親が弟を出産。以降、母親との関係が悪くなる。専門学校卒
業後、就職するが人間関係が上手くいかず退職。以降、アパ
レル、保険会社などを転々とする。その後、精神的に不調になり自宅へ引き
こもる。1年程経過し、繁華街で勤めはじめるがコロナの影響で減収。同時
期に同棲相手から暴力を受け、家を出る。コロナ禍でビジネスホテルの宿泊
費用が下がっていたことから繁華街で働きながらホテルで生活。コロナの状
況がますます悪くなり、所持金も尽きそうになったため、相談。
 ユースサポートハウスの利用は決めるが、その後も部屋には戻らず、東京
で風俗店で働きはじめた。1月ほど風俗店で働いていたが環境に耐えきれず
再度連絡。ユースサポートハウスに戻り、就職活動を開始。飲食店での就労
が決まり、現在は一人暮らしを開始しながら定期的に自宅に訪問し、見守り
を継続している。
──20代・女性
 中学卒業時に入学資金や学生服を購入する費用がなく、両親
と当法人の相談窓口に来所。高校通学中も両親からの金銭的搾
取を受け、相談を継続していた。高校卒業後、札幌にいる知人
を頼り来札。その後、男性宅を転々とする。転居先を探したい
と、ユースハウスナビ事業を何度か利用し、内覧はするが現在同
居している男性宅にいたいとのことで、支援が中断していた。
 本年度に入り、警察から連絡。同居している交際相手から度々暴力を受
け、警察に相談したとのこと。本人が従事スタッフの電話を知っていたこと
から連絡をしたとのこと。
 本人が避難することを強く希望していたことからユースサポートハウスの
利用を開始した。
 利用後、数日が経過し、元交際相手と連絡をとりあっていると知らせがあっ
たことから再度警察に相談。警察から連絡をとらないよう双方に指導があっ
た。また、地下鉄の利用方法がわからず徒歩で通勤していると本人から話が
あったことから、一緒に何度か地下鉄にのり、就業先へ通勤できるよう援助。
一定程度、貯金もあったことから、アパート探しを援助し、住まいを決め、
利用は終結した。利用終了後も、収入が不安定なこともあるので、フードバ
ンクを届けるなどしながら、現在も定期的に訪問・支援を継続している。
──30代・女性
 高校卒業後、来札。その後、結婚し一児を儲ける。夫か
ら言葉の暴力があり、子どもと一緒に家を飛び出す。札幌
市のシェルターに入所するが、携帯電話の機能で夫に居場
所がわかり、警察より強く避難を勧められ、相談。即日、
ユースサポートハウスの利用開始となる。利用後、妊娠し
していることがわかり、本人の強い希望で堕胎。仕事をしていたが、コロナ
の影響もあり出勤回数は減少。
 収入や体調にも不安があることから、生活保護の利用も検討したが、本人
はあくまで就労自立を強く希望したことから、就労を継続しながら自立を目
指すことになった。利用期間中は、他の利用者が子どもの面倒をみるなど施
設全体としてサポート。親からも金銭的な援助を受けることなり、その後、
アパートを確保し、自立した。
 現在も定期的に連絡をとりながら生活状況を確認している。
 時々、子どもを連れてユースサポートハウスに遊びにきている。
──10代・男性
 両親が幼い頃、本人を育てるのが困難になり児童養護施
設へ入所。中学生の頃から万引きを繰り返すようになり補
導される。高校入学後も教師に対する暴力行為や万引きな
どにより逮捕される。
 地方の高校へ再入学し、寮で生活していたが周囲との関係が悪くなり退
学。自立援助ホームを利用していたが、職員への態度が悪いという理由で退
所させられ、ユースサポートハウスの利用につながる。
 本人はすぐの就職は目指してなく、高卒認定を受け専門学校へ行くことを
希望。本人の担当弁護士とも相談し、高卒認定試験へ向け学習できる環境を
整えるための援助を開始。また、障がい手帳を持っていたことから、年度を
またいで支援が可能なグループホームへの入所を決める。数か所のグループ
ホームを見学後、塾からも近いグループホームを体験利用し、生活保護を申
請し、グループホームへ入所した。入所後も定期的連絡をとるなどなどして
近況を確認している。

6 ユースサポートハウス利用者アンケート

(1)利用を開始した理由(利用者8名・複数回答可)

(2)ユースサポートハウスに入居して良かったこと
①利用料・生活費が安い

7 ジョブトレ

(1)事業概要
求職活動期間中、就労意欲の低下や生活習慣の乱れなどを予防
するためユースサポートハウス利用者等を対象に、施設内アルコール
消毒作業、事務所・共同リビング清掃作業、シェルター・生活支援
付き住宅清掃作業・簡易事務作業等の施設管理作業を有償のジョブ
トレーニングとして実施した。
(2)実施機関
 2021年 6 月~ 2022 年 2 月末 平日:9 時~13 時
(3)参加人数   
 延べ 152 名(実人数 9 名)
(4)事業効果
● 作業を通じて、利用者同士の交流が生まれ、ユースサポート 
ハウス内での人間関係の構築につながった。
● 施設の管理作業に参加することで、施設に対しての愛着が芽生
え所属意識につながった。(孤立・孤独対策)
● 生活リズムが整えられ、就労意欲の維持・向上につながった。
● 清掃やアルコール消毒作業をすることで、自身の部屋への美化意
識やコロナ感染拡大予防への意識が高まった。
● ジョブトレの場が住まいと直結しているため、就労が困難な精神
疾患を抱える若者も自主的に参加し、回復につながった。(部屋か
ら出てこれるようになる)

 

8 ユースハウスナビ・
ユースサポートハウス事業の成果

(1)ユースハウスナビ利用目標達成率(3月1日時点)

(2)ユースサポートハウス利用目標達成率(3月1日時点)

 

9 居住支援法人・不動産会社・保証会社・管理会社・
支援団体・自治体・自立相談支援機関員向け研修会
「居住支援と家賃債務保証」研修会報告書
1.日時 令和 3 年 12 月 23 日 13:30 ~ 17:00
2.会場 市民活動プラザ星園2F 大会議室及びオンライン
3.参加人数 47 名
【内訳】 行政 5 名/居住支援法人(支援団体)7 名/居住支援法人(不動産会社)1 名/
居住支援協議会 3 名/医療機関 4 名/障がい者支援 4 名/高齢者支援 1 名/
更生保護 6 名/生活困窮者支援 7 名/不動産会社 3 名/保証会社 4 名/その他 2 名
4.内容
(1)居住支援法人に今後期待されること 13:35~14:05
講師:国土交通省 住宅局 安心居住推進課 課長補佐 山口秀太 氏

【詳細】
 新たな住宅セーフティネット制度の概要と現在の状況についての説明があった。
 居住支援法人に今後期待されることとして、①自らの居住支援法人からの視点だけでなく、地域の視点から居住支援を捉える。②住宅×福祉だけでなく、自治体×民間事業者の連携も重要。地域における居住支援体制を構築するためには、プラットフォームとなる居住支援協議会の役割も重要になる。ただし、民間事業者の力添えがあって、初めて自治体も動ける。地域における居住支援の普及促進・地域資源の掘り起こしが大切で、居住支援法人の母体事業は多種多様であり、本来交わらない業種が交わるのも居住支援の特徴。つまり、意識(表面化)していないだけで、横のつながりが、地域資源を掘り起こすきっかけになるかもしれないとあった。

10 研修会の成果

(1)研修会参加人数の目標達成率

(2)居住支援法人向け勉強会の開催

(3) 視察・講師派遣
 視察: 8回
 講師派遣: 2回
       (全国居住支援法人協議会・一般社団法人あったらいいね)
(4)研修会の成果
 2017 年度から 2019 年度まで本助成金を活用し、不動産会社・保証会社・
自治体・支援団体の職員を対象に研修会を実施し、地域内に居住支援のネ
ットワーク体制が出来つつあった。2020 年 2 月から新型コロナウィルス
の影響により、対面での情報交換会や研修会の実施が困難となった。その
ため、再び互いの活動の状況や地域内での課題・新たな支援の仕組みを対
面で学ぶ機会がなくなり、ネットワークの再構築が必要になった。
 本事業では当初、若者の居住支援相談窓口やユースサポートハウスのよ
うな若者の居住支援を支える仕組みを地域内で広げること、また若者の居
住支援の重要性を制度化することを目的としていたが、新型コロナウィル
ス感染拡大の影響を常に受ける状況にあり、これらの活動も難しくなった。
そのため新型コロナウィルス感染拡大が一時的に収まった時期に、自治体
職員と居住支援のネットワークや地域課題を確認する機会がありその際、

居住支援に取り組む団体は以前よりは増えてきたが、個々の団体の支援対
象・支援内容・得意・不得意が共有出来ずにいるという地域課題を発見。
 本事業は、過去の取り組みに遡る形にはなったが、地域として再スター
トをすることを重視した。本事業では、北海道・札幌市担当課と国交省と
の意見交換の場を作ったほか、居住支援法人向けの勉強会も開催し、オン
ライン形式ではあったが自治体職員・居住支援法人職員が率直に情報交換
を行う場なども設定した。研修会では、これまでとは違い生活困窮者自立
相談支援機関・居住支援法人からの参加だけではなく、高齢者支援・刑務
所出所等の支援・障がい者支援・医療機関などからも参加があり、居住支
援に関する問題はコロナ禍の中で広がっているのだと感じられた。
 本事業のベースは、若者居住支援ではあるが、「若者居住支援」を地域内で
広げていくためには、様々な関係機関とのネットワークや、崩れつつあっ
た「居住支援ネットワーク」を再構築するために「歩みだす」場が必要で
あった。本事業はそのきっかけになったと感じている。本事業での継続は難
しくなるが、自治体等とは本事業の重要性を確認しており、継続に向けて動
き出すことを確認できたことが「現段階」での成果であると感じている。

11 終わりに

事業を通じて見えてきたのは、「家族」がいない若者が沢山いるということ。これは、家族と離散した、もしくは亡くなった、そのようなことではありません。
 2020 年 2 月から新型コロナウィルス感染拡大がはじまり2年以上が経過しました。若者の住まいの問題は、コロナ以前からありましたが、不安定な就労 · 生活環境下にある若者の状況は増々悪化しまし。また、生活困窮自立相談支援機関への若者からの住まいの相談が急増したと報告されています。
 国の居住支援施策は、平成 29 年からスタートした新たな住宅セーフティネット制度や令和 2年からスタートした日常生活支援住居施設など、確実に住まいの問題や居室確保後の生活支援について議論が進んできています。また、児童福祉法の改正などもあり、「一部」の若者の支援は進むものと考えられます。
 今後は居住支援政策の中で、「若者」についての議論が進むのかも知れませんが、現状は高齢者・障がい者 ・ 刑務所出所者等の議論が中心です。「公的な支援」は確実に進んできていますが、ユースサポートハウス事業で出会った若者たちをみていると「公的な支援」にも限界を感じます。
何故なら、やはり「家族」でないと、担うことが難しい部分も多々あるからです。
 本報告書を作成しながら 2021 年度のユースサポートハウスを振り返ると、「両親の再婚により居場所を無くした若者」·「福祉的支援(おせっかい)に馴染まない若者」が印象的でした。また、本事業では、保護観察中や補導された若者の行き先が無く困っている、という相談もいくつもありました。コロナによる影響は何かを問われることが非常に多く、もっともらしく説明をした時、素晴らしい「解答」とされ、様々なものが手に入ります。生活困窮者向けの給付金の話がよく話題にあがります。確かに、一時的には非常に助かるものです。では、それが何に使われたのか?
「誰かの」根本的な問題を解決したのか? 現場にいる私たちとしては疑問が残ります。
私たちは、2017 年度から若者の居住支援に取り組んでおり、2019 年度の報告書の中では、①信頼関係の構築 ②金銭教育 ③つながり続けること、を今後の若者居住支援のキーワードとしました。その「根幹」にあるものは、コロナ禍でもコロナ前でも、そしてコロナ収束後も変わることなく、「家族」だと思います。日本社会は家族に様々なものを文化として背負わせてきました。
住まいの相談に来る若者は「孤立」しており、家族関係が非常に悪く、「憎んで」いる若者も多くいます。生活が一旦落ち着くと、少し自身のことを考える余裕ができます。本当は「何が」必要なのか?
 決して終わることない「家族」なのだと、事業を通じて感じています。「家族」が担う機能も高齢者と若者とでは全く違います。居住支援は「暮らし」全てについて考える支援であり、それは 24 時間 365 日について考えなければいけません。年代・特性・課題別に考えることは非常に縦割りでありますが、居住支援が必要な若者についてどう考え、サポートしていくのか? 考える必要があります。若者に必要な、決して終わることのない「家族機能」をどう考えていくのか、若者にとって「家族」はどんな役割を担っているのか? 議論していく必要があると思います。