
孤立している若者、困難を抱えている若者に対し一人暮し体験の場を提供しその実践を通して、一人暮しに必要な能力と若者特有の難しさを明らかにする事業(終了しました)
(WEB版調整中です。)
1. 事業全体について
2
⑥ 一人暮らしを開始・継続するためには、どのような社会経験・スキル・能力を身に付ける必要があるのかに
ついて具体化されていない。
⑦ 孤立する若者と関わる上での「難しさ」は共有されているが、どのような「難しさ」・「背景」があるのかに
ついて言語化されていないため、若者の生活支援は制度化されにくい。
4)事業対象者の想定
○住まいを失った若者 490名程度
令和2年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金(社会福祉推進事業)「不安定な居住状態にある生活
困窮者の把握手法及び支援の在り方に関する調査研究事業」では現在の支援施策では、不安定居住者の
15%にしか支援が届いていないと厚生労働省に報告された。これは、令和2年度札幌市ホームレス相談支援
センターのシェルター利用者のうち10代・20代の利用が73名であった。(73×100÷15で算出)
○引きこもっている若者 4224名
札幌市が2019年に実施したひきこもり調査では、15歳~39歳まで方で6604名と推計されているため、
各年齢の平均264名×16(15歳~30歳)として算出。 ※本事業では16歳~30歳までの若者が対象のため
5)今回の事業について
孤立している若者の多くが、家族関係が非常に悪く、困った時に頼れる人がいない。一人暮らし(自立した生
活)をするには社会経験・生活スキルが乏しく、それらが要因となり生活破綻を起こす若者もいる。本事業で
は、一人暮らし体験の場を設置し、社会経験を積みあげることや生活スキルの獲得・つながりの再構築を目指
す。また、実践事例を通して、これまで具体化されてこなかった、一人暮らしを開始・継続するために必要な社
会経験・スキル・能力とは何か?若者特有の「難しさ」とは何なのか?について具体的に言語化し、報告書を作
成する。
事業全体イメージ図
3
│内 容│ 一人暮らし体験スペースを2部屋確保し、自炊・清掃・入浴・金銭の計画的な使い方等を学
ぶと共に、入浴や生活リズム等、基本的な生活習慣を身に付けるための生活訓練と、未就労
の若者に対しては段階に応じた就労支援(中間的就労)を実施した。
│設 備│ 生活に必要な家具家電・布団・日用品のほか、2022年度の検証会議の提案を受け2023年
度からはWi-Fiを完備。リビングにPCを設置した。
1)ユースサポートハウス(一人暮らし体験)
❶
事業概要
■ 居室写真
2. 事業概要
4
1)ユースサポートハウス(一人暮らし体験)
│利用期間│ 【2022年度】 原則:概ね3月~6月(状況に応じて柔軟に対応)
※本人の希望・状況によっては、1日単位からの受け入れを行う。
【2023年度】 2022年度の検証会議での検討を受け、2023年度から期間の変更・純粋な一
人暮らしの体験も可能にした。
原則:概ね2週間~6月
※本人の希望・状況によっては、1日単位からの受け入れを行う。
│利用料金│ 【2022年度】 ⃝収入の無い若者:無料
⃝収入のある若者:原則1日1,500円
※収入が月10万円未満の若者については、本人の状況に応じて利用料を設定する。
※家賃・光熱水費・食材、生活消耗品等込み。
【2023年度】 2022年度の事業実施状況から、本人の収入の状況に応じて、細かく利用を設
定する形にした。
⃝収入の無い方・収入の低い方(月36,000 円未満):無料
⃝収入のある方(月36,000 円以上):1日300 円~ 1,500 円
※利用料には、家賃、光熱水費等を含む。
※収入とは、同居する家族・知人等の収入ではなく、あくまで本人。
※収入の25%を目安として、30で割った金額を1日の利用料とする。(100円未満は切り捨て)
│場 所│ 札幌市東区・豊平区
■ ユースサポートハウス外観 ■ 共同リビング
5
│期 間│ 2022年度:2022年4月1日~2023年3月31日
2023年度:2023年4月1日~2024年2月29日
(終了予定は2024年3月末)
│対象年齢│ 16歳~30歳まで
│定 員│ 2名
│利用人数│ 2022年4月1日~2023年3月31日:7人
2023年4月1日~2024年2月29日:8人
利用した若者は、家族関係を背景にした者が多い。また、職場の人間関係を背景
に離職・住まいを失い、利用開始につながった者もいる。
※避難:相談開始時は自宅で暮らしていたが、家族関係により避難が必要だった状態。
※家出:相談開始時にはネットカフェや友人宅にいるなど住居を喪失していた状態。
※児童養護施設出身者2人、児童相談所の一時保護を受けた経験がある者が1人、触法少年が1人。
年齢 性別 利用開始時状態 利用開始理由
1 20歳 男性 無職 家族関係による避難
2 20歳 男性 無職 家族関係による避難
3 21歳 女性 無償 家族関係による避難
4 19歳 女性 無職 一人暮らしの体験
5 19歳 男性 学生 家族関係による家出
6 20歳 男性 無職 家族関係による避難
7 29歳 男性 就労中 家賃滞納による住居喪失
8 28歳 男性 無職 職場の人間関係
9 27歳 男性 無職 職場の人間関係
10 16歳 男性 学生 家族関係による避難
11 29歳 男性 就労中 家賃滞納による住居喪失
12 22歳 女性 学生 家族関係による家出
13 29歳 男性 就労中 職場の人間関係
14 21歳 男性 就労中 家族関係による家出
15 23歳 女性 無職 家族関係による家出
❷
ユースサポートハウス
利用実績
■ 利用開始理由と職業
2. 事業概要
6
│家族との交流について│
│障がいの有無について│
│収入の状況│
ユースサポートハウス利用開始時は、全員家族
との交流を断っていたが、利用開始後や利用終了
後、居宅生活を開始してからなど、一定程度距離
をとれる環境に身を置くことで、家族との交流を
再開した若者も多い。
※現在の状況は、2024年2月29日時点のもの
で、2人はユースサポートハウスを利用中。
※1人は奨学金と就労収入を併用
※現在の状況の就労収入14人の内、2人は生
活保護を併用、1人は奨学金を併用。
※診断有りの内、2人は障がい手帳を取得済み。
2人は利用終了後に取得。
利用開始前 利用開始後
交流有り 0 9
交流無し 13 4
交流する家族がいない 2 2
利用開始時 利用終了時 現在の状況
無し 8人 1人 0人
就労収入 5人 7人 14人
貯金 2人 2人 1人
奨学金 1人 1人 1人
生活保護 0人 5人 2人
診断有り
無し 7人
疑い 3人
診断有り 5人
人数
民間賃貸住宅 5人
生活支援付き住宅 3人
寮付き就労 1人
実家へ戻る 3人
施設へ戻る 1人
現在利用中 2人
人数
精神疾患 0
発達障がい 6人(疑い3人)
知的障がい 1人
身体障がい 1人
障がいの疑い、
診断有りの方の内訳
ユースサポートハウス
利用終了後の住まいの確保
7
■ 内覧の様子 ■ 次の住まいへ
│利用宿泊数│
2022年度:362日(平均宿泊数:51.7日)
2023年度:729日(平均宿泊数:91.1日)
【利用開始時の状態による平均利用期間】
就労中・無職ともに大きな差は無いが、学生の場合、学業もあるた
め、生活保護の活用や就労による経済的自立も難しいため、利用日
数が長くなっている。
│訪問・同行等支援回数(居宅生活者含む)│
2022年度:延べ回数1175回
2023年度:延べ回数1791回
平均利用日数
就労中 47.7日
学 生 161日
無 職 52.1日
2. 事業概要
8
2)検証会議
│開催目的│ ユースサポートハウスの実践事例に基づき、一人暮らしを開始・継続するために
は、「どのような」社会経験・スキル・能力を身に付ける必要があるのか?また、若
者特有の「難しさ」とは何なのか?について整理・言語化するための現場の実践者
及び有識者による検証会議を開催する。
│検証会議委員│ 座長:札幌国際大学短期大学部准教授 山内 太郎 氏
委員:札幌地域若者サポートステーション 山名 徹 氏
札幌市ホームレス相談支援センター 山中 啓史 氏
NPO法人CAN 屋代 通子氏
│期 間│ 2022年6月~2024年3月
│2022年度の内容│
① 開催日
第1回:2022年 7月 4日
第2回:2022年 8月24日
第3回:2022年10月19日
第4回:2022年12月 8日
第5回:2023年 1月19日
第6回:2023年 2月16日
② 議論概要
検証会議の中で、「若者特有の難しさ?」とは何か?について議論がされた。その中で、当事者である
若者は「特有の難しさ」を感じておらず、支援者が感じる若者「支援」特有の難しさを感じているのでは
ないだろうか?という議論がなされた。その議論に基づき、2022年度は「若者支援特有の難しさ」を言
語化するための仮説を立て、中間報告会で報告を行った。
│2023年度の内容│
① 開催日
第1回:2023年 6月29日
第2回:2023年 8月 8日
第3回:2023年 10月18日
第4回:2023年 12月19日
第5回:2024年 1月26日
第6回:2024年 2月15日
第7回:2024年 3月25日(報告書作成時点での予定)
9
② 議論概要
2022年度の検証会議で仮説を立てた「若者支援特有の難しさ」を立証するため、これまでの事例検証
が進められた。事例検証を進める中で、若者に対し、「学生時代のこと」・「家族のこと」・「相談できる
人」・「支援機関との出会い」・「どのようなサポートがあったらいいか」などヒアリングをしていくこと
が決められ、各検証委員の機関で支援している若者に対しヒアリングを実施した。ヒアリング実施後、
「若者を支援する側の難しさ」もあるが、若者のライフストーリーを聞く中で、それぞれの若者が「難し
さ」を抱えており、「若者特有の難しさ」というのもあるのではないだろうか?となった。また、一人暮ら
しを開始・継続するためには、「どのような」社会経験・スキル・能力を身に付ける必要があるのか?に
ついては、ヒアリングや事例検証の中で、どのように「生活」をしていくかにもよるため一概に言語化す
るよりも、ヒアリングの中で若者が話していた、雑談も含めて相談できる「環境」や一人暮らしをしなが
ら失敗できる「環境」こそが重要ではないだろうかという結論に達した。
│今後重要な視点(議論の中で)│
支援をするには何かしらの制度
活用が必要だが、制度に中々は
まらない。
支援する側が「若者」にフィットし
ていない。支援する側がどう変
容していくかが重要。彼らに対
する支援の難しさ。「若者の難し
さ」と言うよりは「支援者がズレ
ている」という認識。
若者が選びたくなる支援環境
(Wi-Fiと携帯は必須)というと
ころで、困った時に近くにいて欲
しいとか今はほっといて欲しい、
不安になった時だけ聞いて欲し
い。そういう環境があった上で
雑談が重要になってくる。
若者特有の難しさというのは、
支援者が支援をする時の関わり
方の難しさだと思う。
親や親族等の支えが無い、孤立
している若者は、生活基盤を優
先するために、10代の時から働
かざるを得ない。そのため時間
やお金に余裕を持ちながら、職
業スキルを身に付ける、進学す
る、友人と遊ぶなど(若い時に必
要な経験)が出来ない。一人暮ら
しをする能力を身に付けるに
は、まずは「安心できる」生活基
盤の保障が必要ではないだろう
か。
ヒアリングの中では、面談の中
では聞くことができない、ライフ
ストーリーを聞くことができた。
若者が語ることで、その話の「主
役」になれる。主役としてはじめ
て表現できる正論や価値観・気
持ちがそこにはある。
若者本人から見える「風景」を理解し共有できることが重要である。そ
のためには、関わる大人の立ち位置をずらさないといけない。
「若者の難しさ」を数字で説明を
するのは難しい。(何人参加し、
どの支援に何分かかり何回実施
したなど)
家族関係による飛び出しが多
い。虐待、ネグレクトではないが、
家に居づらい、居場所が無いと感
じる。友人知人宅を転々とする。
大人(支援者)とは異なる価値観がある。例えば、仕事の選び方も、
YouTuberやプロゲーマー、声優などを目標とする若者も多い。シェル
ターを利用する環境も「衣食住」や「安全」の保証ではなく、「Wi-Fiが使
える」・「携帯電話が使える」を最優先に考える。
2. 事業概要
10
│若者支援の難しさとは?│ ★「支援が思ったように進まない」難しさ
★「本人の意向を引き出す」難しさ
★「選択肢を現実的なものに出来ない」難しさ
1人の若者を支援する時、この3つの難しさが、単独ではなく複雑に重なり
合うため、若者支援を難しくさせている。
若者支援の
「難しさ」
❶「支援が思ったように進まない」
❷「本人の意向を引き出す」 ❸「選択肢を現実的なものに出来ない」
生活基盤を優先し整える必要がある中で、今後
どんな仕事を探していくか相談を受けた際、アニ
メの声優やプロゲーマー、YouTuberになりたい
という希望があった。
※ 進路相談の際にも、職業イメージがなく上記の
職業を希望する若者もいる。
大学の進学を本人は希望しているが、経済的に
困窮しており、生活基盤を整えることを優先せざ
るを得ない(仕事に就く)。そのため進学するため
の勉強や、勉強に集中するための時間(生活基
盤)が無い。仮に進学し、学費は奨学金等で賄え
ても、生活をしていくための基盤が無い。(同様の
ことが職業訓練の参加などにも言える)
家賃滞納が数カ月あり、退去について相談した
いとあった。相談日を調整するが、本人が決めた
日に現れず、8回目でようやく相談につながった
が、退去期限が目前に迫っていた。(住まいを決め
転居するだけの余裕がなくなった)
DVの相談にきて、安全を最優先に考えシェル
ターの利用を進めても、Wi-Fiが無かったり、携帯
が使えなかったり、規則が厳しいと、友人の家の
方がいいと考え、支援の利用になかなかつながら
ない
│ライフチャートから見えてきたこと│
【学 生 期】 ⃝ 中学卒業以前の両親の離婚・再婚により、「本人が必ずしも望まない」新たな家族
との生活。
⃝ いじめや家族内不和による、家庭や学校での居場所の喪失。
→自室に引きこもるもしくは、家出を繰り返すなど、家族と距離をとる傾向がある。
【学校卒業後】 ⃝家族内不和は続き、「家出」・「自宅での引きこもり状態」が継続している。
(状況が変わってない)
⃝家出や支援機関の紹介で、一人暮らし体験事業につながる。
■ 若者支援特有の難しさイメージ図
【具体的な例】
11
【一人暮らし体験事業の効果(ユースサポートハウス)】
⃝ 自分自身の「居場所(スペース)」を確保、家族から離れることで利用開始当初は前向きに
変わる若者が多い。
⃝家族と距離をとることで、その後家族関係の回復につながる若者もいる。
⃝ 誰かが、「気にかけている」環境、一人暮らしを「経験」できる場を獲得するが、職員との
関係や友人・交際相手の影響により、再び、「安全な場を失う」若者もいる。
⃝ライフチャートは2024年2月29日のものであり、その続きがある。
2. 事業概要
12
10代・男性・Aさん
20代・男性・Bさん
事例 ❶
事例 ❷
3. 事例紹介
【背 景】 ⃝ 高校3年時の夏に、母親、父親が相次いで病死。児童養護施設へ入所。
⃝ 国立大学への進学を希望し、受験したが不合格となった
⃝ 高校卒業後、アルバイトをしながら浪人をしていたが、施設の利用継続が難しいた
め相談。
⃝ 施設職員と見学に来所・内覧し、ユースサポートハウスの利用につながった。
【支援内容】 ★ ユースサポートハウス利用開始後は、アルバイトをしながら、大学受験に向けて
勉強していたが、受験とアルバイトを同時に行うことは難しいと話していた。
★ 食事会に、無料の時は参加。職員とは雑談するが、他の入居者と交流することは
ほとんどなかった。
★ 大学受験に失敗するたびに、今後の進路について再検討した。志望校を変えるな
ども提案したが、両親と話していた大学のため、変更することは本人の中で出来
なかった。(3回受験をしたが上手くいかなかった)
★ 大学進学をあきらめ、電気工事の会社に就職。給与も安定的に入り、エアコンの
ある部屋に引っ越しすることを決めた。
★ 仕事が1年間続き、貯金も出来たことから、連携不動産店を紹介。(居住支援法
人)家賃債務保証会社の利用の際、緊急連絡先を引き受け、入居が決定。連携す
る赤帽(引っ越し業者)を紹介し転居。
★ 転居後も、児童養護施設職員と交代で、不定期ではあるが連絡・訪問をしてい
る。現在も仕事を継続している。
【背 景】 ⃝ 高校卒業後、国立大学へ進学するが中退。
⃝ 大学中退後は、実家の家業を手伝う。10年程手伝ってきたが、父親との関係が悪
くなり引きこもり状態となる。
⃝ 就労に向け動き出そうと、生活困窮者自立相談支援機関へ相談。支援を受けなが
ら、徐々に家から出る機会を増やし、仕事を開始。仕事に就いたが、両親との関係
が悪く、それが原因となり退職。両親への苛立ちを抑えることが難しくなった。
【支援内容】 ★ユースサポートハウスを利用し、生活保護を申請。
★障がい年金の申請(年金を取得)
★B型事業所へ通い始めるが、周囲に馴染めず退所。自室で小説などを書いて過ごす。
★食事会へ参加し、同年代の入居者と交流を持ち、本などの貸し借りを行う。
★少しずつ、家族との交流を再開。定期的に実家に帰るようになる。
★自炊ができない、料理にバリエーションを持たせるのが難しいとあり、訪問看護を利用。
★ 訪問看護職員との信頼関係ができ、訪問看護利用開始から2年ほど経過し、訪問
看護実施団体の運営するグループホームへ転居した。
13
事例 ❸ 10代・女性・Cさん
【背 景】 ⃝ 小学校・中学校と親の養育能力に課題があり、児童養護施設の
入退所を繰り返していた。
⃝ 高校入学後、友人たちと施設男性職員へのいたずらや男性職員
にいたずらをされそうになった等の報告を繰り返していた。
⃝ 友人たちと施設を抜け出し、ラブホテルで売春行為をしていたこ
とが発覚し、児童相談所に保護された。
⃝ 本人が施設入所を拒絶していたため、児童相談所職員が民間の
アパートへの入居支援を実施。本人が未成年であるため、契約行
為が難しく、アパートを借りることが難しかった。
⃝ 児童相談所職員より相談。本人と来所。状況や希望を確認。(お
金を貯めて、専門学校に行きたい)
⃝ 児童相談所職員と「信頼関係」が構築出来ていたため、継続的に
関わることを依頼。
【支援内容】 ★ 新たに部屋を借り上げ、ユースサポートハウス事業で本人を受け
入れ。部屋の家具家電は、児童相談所職員と本人が選び、購入。
★児童相談所が生活保護の調整を行い、利用を開始。
★ 利用開始後は2週間に1回程度、状況確認のため自宅を訪問。
(児童相談所職員も定期的に訪問)
★ 近くに母親が住んでいたため、母親と行き来を再開。母親からお
金の無心があり、児童相談所が介入し、母親を指導。
★ アルバイトを開始する。
★ 知人から、一緒に働こうと言われていると相談。同時期に、他の入
居者から男性が夜中に出入りしていると報告を受ける。
★ 児童相談所での支援が終了。本人にも確認済みと児童相談所か
ら連絡がある。
★ アルバイトのお金と生活保護費の管理がうまくいかず、生活に
ついて相談しようと約束するが、当日無断でのキャンセルが続
いた。
★ 連絡が取れなくなり、他の入居者から、転居している姿が目撃さ
れたことから、部屋に入室。家具家電は全てなく、ゴミだけが置
いてあった。(児童相談所にも報告)
3. 事例紹介
14
事例 ❹ 10代・女性・Dさん
【背 景】 ⃝ 母が統合失調症で度々、自殺未遂を繰り返していた。父は子育て
に興味を示さず、児童相談所が介入。3歳の時に、児童養護施設
に入所する。
⃝ 高校卒業後、働き始める。施設職員も月1回、本人宅を訪問、見
守りを行う。
⃝ 就労開始後、3ヵ月で退職。再び、児童養護施設に戻る。精神科
を受診したところ発達障がいと診断される。
⃝ ユースサポートハウスの利用について相談。
【支援内容】 ★ 施設職員は、事業利用に前向きであったが、本人は希望している
様子は無かった。
★ 住み慣れた場所から離れることに不安が強かったため、10日程
度の受入れとなった。(本人も了承)
★ 利用開始後、期間も短いことから、まずは「一人暮らし」をして
みること。色々な場所に行き札幌の生活に慣れることを施設側
は希望していたが、本人は望んでおらず、近隣スーパーの同行
と、毎朝、女性職員が声をかけることからはじめた。
★ 髪の毛やふけなどが部屋に飛散し、掃除やゴミを捨てる習慣が
なかったので、女性職員と一緒に掃除の練習をした。
★ 女性職員の訪問にも慣れ、毎回1時間以上、雑談をしていた。
(共同リビングに顔を出すことはなかった)
★ 精神科への受診理由や服薬について、わからないと話していた
ので、次回受診時に自分で医師に確認するよう助言した。
★ 最終日、女性職員に自身が描いた絵をプレゼント。「自分にも居
ていい場所があったんだ」と話し、施設に戻って行った。
★ 利用終了後、精神科受診時に、専門的な支援が必要であると助
言を受けたため、福祉サービスを活用することになった。
15
事例 ❺ 10代・男性・Eさん
【背 景】 ⃝ 小学校高学年時に母親が他界。中学時に父親が再婚するが、再
婚相手の子どもと上手くいかず、兄弟等への暴力行為もあり児
童養護施設へ入所。
⃝ 施設入所後は、他の施設利用者とのトラブルを繰り返し、孤立し
ていた。
⃝ 高校卒業後、住込みの仕事に就労。1年半程勤めたが、上司と上
手くいかず退職。暮らす場所がないため、勤務先の事務所で寝泊
まりさせてもらっていた。
⃝ 札幌の支援機関に電話し、相談につながった。
【支援内容】 ★支援機関と調整をとり、受入日を調整。
★ 受入日当日、本人を迎えに行き、ユースサポートハウスの利用を
開始。
★ 就職活動を開始し、アルバイトを開始する。
★ ユースサポートハウス利用開始から1カ月程度経過し、一人暮ら
しをしたいと本人から相談を受ける。未成年のため、契約行為が
難しく、部屋を借り上げ、本人に提供。(20歳になったら名義を
切り替える)
★ 毎週土曜日に部屋を訪問。ゴミ等が散乱しているときは一緒に
片づけた。
★ 建設会社での正社員の仕事が決まる。
★ 太鼓を購入し、休みの日は公園で叩いていた。
※中学の頃の友人と交流を再開しはじめる。
★ 1年ほど経過し、会社が遠いため、本人の部屋を会社が借り上げ
ることになった。
★ 友人たちと部屋を掃除し、転居。転居する際、ラインを交換。半
年に1回程度であるが近況を報告。(大体はライブの誘い)
3. 事例紹介
16
事例 ❻ 10代・男性・Fさん
【背 景】 ⃝ 記憶がある頃からは、父親はいなく、母親と二人暮らしだった。
⃝ 小学校高学年になると、学校の勉強にはついていけなくなっていた。
⃝ 中学生の時には不登校になり、母親に注意を受け、暴力をふるい、児
童相談所に保護され、児童養護施設に入所。
⃝ 高校卒業後、実家に戻ったが母親とうまくいかず、一人暮らしを開始
した。(生活保護)
⃝ 働く気持ちにはなれず、保護課より指導を受けた。
⃝ 金銭管理ができず、趣味の物を購入し、家賃滞納が続き、家を出さ
れた。
⃝ ホームレス支援団体に相談。軽度の知的障がいが疑われたことや緩や
かに就労に向けた支援が必要と支援団体が判断し、当団体への相談
に至った。
【支援内容】 ★ 当団体のシェルターに移動し、生活保護を申請
★ シェルター利用中は、リビングでテレビを観ていることが多かった。
住人みんなで食べるアイスやおやつを、度々一人で食べてしまった。
★ 一人暮らしを希望したため、連携不動産会社にアパート探しを依頼。
緊急連絡先には担当者がなった。
★ 生活保護費で布団代を受給したが、いいマットレスが欲しいと布団は
購入せず、高額のマットレスを購入。
★ 一人暮らし開始後も、定期的に訪問。ゴミを捨てることが出来ていな
かったので、訪問の度にゴミをまとめ、一緒に捨てた。
★福祉サービスの活用をすすめたが、本人は拒否。
★ 昼夜逆転の生活をしていたので、除雪の中間的就労を紹介。参加した
が、昼夜逆転の生活は改善されず、夜寝ないで参加していた。
★ 開始当初は定期的に参加できていたが、途中からは休むことが増え、
最終的には辞めた。
★ 支援機関を紹介し、支援機関のプログラムに参加。そこで知り合った
男性と交際を開始。
★ 交際開始後、連絡がとだえはじめる。
★ 交際相手と同棲するため、転居。支援機関にも通うのもやめ、連絡も
とれなくなった。
17
事例 ❼ 10代・男性・Gさん
【背 景】 ⃝ 幼い頃に、両親が離婚。父親に引き取られる。
⃝ 中学の頃、父親が再婚。義母の子ども(兄)からいじめを受け、家出を繰り返す
ようになる。
⃝ 発達障がいの可能性があるため、医療機関の受診を勧められた。
⃝ 高校卒業後、就職するが3カ月で退職。兄弟からのいじめが続き、家出を繰り
返し借金を重ね、父から家を出るよう言われた。
⃝支援機関に本人が相談。シェルターの利用を開始。
⃝ シェルターから無断で居なくなることが何度もあった。
⃝ シェルター利用期間中に生活保護を申請、障がい手帳を取得。GHの利用も進
めたが、入居を拒否したため、ユースサポートハウスの利用に至った。
【支援内容】 ★ 利用後、毎朝自室を訪問し、声掛けを行った。(出てくる時と出て来ない時が
ある)
★ 地域交流カフェのボランティアに毎月参加。交際相手の支えもあり、就労に向
けて意欲を持ち始める。
★ 一般就労に向け福祉サービスを活用することを確認。相談室を紹介。数か所見
学をし、自宅近隣の事業所へ通いはじめる。
★ 親友(事例⑧)との関係について、交際相手から関係をやめるよう言われる。
交際相手との関係が悪くなり、欠勤することが多くなった。
★ 家出中の事例⑧を無断で宿泊させており、朝の声掛けでの応答がなくなる。
★ 事例⑧のユースサポートハウスの利用が決まり、ジョブトレなどにも積極的に
参加を開始する。また、債務整理についても相談を開始する。
★ アルバイトを開始する。
★ 事例⑧が再び本人宅に泊まりはじめた頃から、不穏になる。(連絡に応答しな
い、職員が居る時間は不在にするなど)
★ 警察署より車両損壊したと連絡がある。
★ 一度実家に戻るが、父親や兄との関係が上手くいかず、再びシェルターを利用。
★ 住み込みの仕事が決まり、就職。現在も継続している。
3. 事例紹介
18
事例 ❽ 10代・男性・Hさん
【背 景】 ⃝ 事例⑦のところに本人の母が度々無断で訪問。施設職員が注意をすると、「息
子は事例⑦が働かず楽をして暮らしているため、本人があこがれ迷惑をしてい
る」と言われる。
⃝ 母親はしつけが厳しく、高校の時から家出をたまにし、しばらくすると自宅に
戻って普段通り生活をしていた。
⃝ 家則では、平日は宿泊禁止。門限は23時。本人は度々それを破り喧嘩になって
いた。
⃝ 事例⑦の部屋から見知らぬ男性が出てきたので注意。状況を確認。本人は家出
中で2週間前から事例⑦の部屋で寝泊まりしていた。注意した際、家には戻り
たくないため、地下街で寝泊まりするとあったため、ユースサポートハウスの
利用を提案。
⃝ 専門学校(3月卒業)に通っており、家出をしてからは行っていない。翌週、国
家試験があり、合格したら学校を辞め、内定をもらった会社から働き始めても
いい、と言われている。
【支援内容】 ★ 利用開始翌日に母親と三者面談を行った。本人からは、門限・宿泊についての
制限の撤廃、携帯電話を戻すようにあった。また、行きたくもないのに今の専
門学校に行かされたなど、不満がぶつけられた。母親は門限・宿泊についての
家則は変えないと回答。
★ 母親がリビングに来所し、事例⑦への無理解の発言や生活保護受給者に対す
る差別的発言もあったため注意。
★ 母親との三者面談は平行線に終わったが、利用開始後は学校へ通いはじめ、資
格も取得した。
★ 利用開始から2週間ほど経つと、夜遅い時間の友人の出入りや階段の昇り降り
の音など、近隣住民から苦情があり、注意。
★ 家族関係は徐々に改善され、週末や年末年始など自宅に帰るなどしていた。
★ 内定を受けた会社で働くことが決まり、新生活の準備をするため、自宅に戻る
よう伝え、本人も了承。
★ 現在は祖母の家で暮らしている。
19
事例 ❾ 20代・女性・Iさん
【背 景】 ⃝ 小学校の時に両親が離婚。
⃝ 中学に入り、母親が再婚。その後、再婚相手との間に2児を出産。
⃝ 高校に入学し、大学への進学を目指していたが、学力がたりず、断念。母の姉の助言
で、専門学校に進学。
⃝ 専門学校卒業後仕事をするが、周囲との関係や仕事を覚えることが難しく3カ月で
退職。
⃝ アパレル関係で仕事を開始し、義父の協力もあり一人暮らしをはじめる。
⃝ 同僚から叱責されるなどあり、うつ病となり退職。
⃝ 同棲相手と度々喧嘩になる。喧嘩をし、家を出た。
⃝ 親族から、同棲相手との交際を反対されたが、交際を継続。
⃝ コロナ禍でビジネスホテルに宿泊しながら生活をしていたが所持金がなくなり、親族
と共に相談。
【支援内容】 ★ 面談の中で、家族の過干渉について辛いと訴え、ユースサポートハウスの利用を希望。
★ 「明日から利用する」と連絡はあるが、翌日ビジネスホテルの前に迎えにいくが、「今
日はやめて明日から利用する」ということを、2週間程度繰り返した。
★ 交際相手と東京に行ったが、宿泊先で喧嘩になり、警察が介入。北海道へ戻る交通費
がないと相談。航空機を2回手配し、2回新千歳空港へ迎えにいくが、戻って来な
かった。
★ 2カ月後、夜間に「大至急助けて欲しい」と本人から連絡があった。本人がタクシー
から降りると気絶。救急車で搬送。意識を回復すると記憶喪失になっていた。両親に
連絡をとり、両親が本人を自宅へ連れ戻した。(都合が悪くなると、記憶喪失的な振る
舞いや気絶をするといった行為がある)
★ 父親より、一緒に暮らすことは難しいと相談があり、ユースサポートハウスを利用開始。
★ 1カ月ほど経過し、本人から一人暮らしをしたいとあり、生活保護を申請。
★ 父親が本人と病院へ受診。障がい等はなく、単なる甘えと、医師より助言を受ける。
★ 他団体のサブリース住宅に入居。入居後、携帯を契約。携帯を持って以降、本人に連
絡をしても連絡がつかないことが多くなった。
★ 夜中に階下の部屋に漏水していると連絡があった。至急、本人に連絡をとり、状況を説
明。お酒を飲んでいるので「これから飲まないか?」とあった。本人が居る店に迎えに
行ったが、姿は無く、漏水や被害者への対応を管理会社と行う。
★ 自室に戻ってくることはなく、連絡もとれなくなった。
★ 事故から2カ月ほど経過し、警察から連絡。(本人は記憶がなく、職員の名刺を持っ
ていたので連絡をした)
★ 釈放したと警察から連絡があったが、本人からの連絡は無かった。
★困ったときに、メールで連絡がある。
3. 事例紹介
20
事例 ❿ 10代・女性・Jさん
【背 景】 ⃝ 父親・母親と3人暮らし。(父親の年金で生活)
⃝ 中学卒業時、生活苦のため両親が生活困窮者相談窓口に来所。
⃝ 高校進学が決まったが、制服が購入できず、進学を断念させると
母親から連絡があり、当団体で高校の制服を探し、卒業生から譲
り受け、本人に提供。
⃝ 高校進学後、アルバイトを開始したが、給料のほとんどを生活費
に充てることになった。
⃝ 高校3年時に両親との生活に耐えきれず相談。
⃝ 高校卒業後、SNSで知り合った男性を頼り、家出。男性の紹介
で、飲食店や風俗店で働く。
⃝ 男性と別れ、ネットカフェで生活していたが、別の男性と出会
い、知り合った男性の実家で1年ほど生活。
⃝ その男性とも上手くいかなくなり、再びネットカフェで生活。別
の男性と出会い、その男性宅で同棲。
⃝ 男性の勧めで、療育手帳を取得。コンビニでアルバイトをはじめ
た。職場の同僚と飲みに出かけ、帰宅が朝になることが度々あ
り、交際相手の男性から暴力を受け、警察に相談。警察の勧めも
あり、ユースサポートハウスの利用を開始。
【支援内容】 ★ 交際相手のところには戻らないと話していたが、数日後、連絡を
取り合い、戻るかどうか迷いはじめる。
★ 戻らないと本人からあったため、生活保護を申請。
★ 生活保護申請から1週間ほどが経過し、本人から生活保護の申
請を取り下げ、交際相手のところに戻りたいと相談。警察に連絡
し、状況を説明。警察も戻ることを止めたが、本人の意思は固
く、生活保護の申請を取り下げ、交際相手のところに戻った。
★ その後も、何度か連絡をとっているが、特に変わりはないとの
こと。
21
事例 ⓫ 20代・男性・Kさん
【背 景】 ⃝ 幼い頃に両親が離婚。生活保護を受給しながら生活していた。ライフラインがとまる
ことも時々あった。
⃝ 小学校の時から学校の勉強にはついていけず、給食を食べるために学校に通っていた。
⃝ 中学生になると、授業内容が全くわからなくなった。部活には参加していた。
⃝ 中学校卒業後、離婚した父親の仕事を手伝ってはいたが、指示内容がわからず、強い
叱責を受けたため退職。
⃝ 18歳の時に、母親から家を出るよう言われ、家出をして繁華街で客引きをしていた。
会話をすることは得意だったため、長続きした。
⃝ 26歳の時に、店の女性との交際がオーナーに発覚し、店に軟禁された。店から逃げ出
したが行く当ても無かったため、公園や建物の隙間などで半年近く路上生活をした。
(食べ物等は、女性が提供)
⃝ 路上生活がきつくなり、支援団体に相談。シェルターを利用。文字の読み書きが難し
く、寄り添い型の支援が必要と支援団体が判断し、当団体を紹介され相談に至った。
【支援内容】 ★ 友好的な性格で、他のシェルター利用者とコミュケーションをとることは得意であっ
たが、漢字の読み書きや計算が難しいことから、障がい手帳取得を提案。(シェル
ター利用中に検査機関へ)
★ 一人暮らしを希望していたことから、連携不動産店を紹介し、緊急連絡先に職員がな
り、入居契約。(紹介した不動産会社を利用したことがあり、重要事項説明書の文字
が読めず、帰ったことがあった)
★ 入居後、相談室へ同行。障がい手帳は発行されてなかったが、状況を説明し、福祉
サービス活用のための準備を開始。
★ ボランティアスタッフと定期的に自宅を訪問。賞味期限がわからず、傷んだ卵を食べ
たりして体調を崩すことや、金銭管理ができず食事がとれないこともあり、夜中に訪
問することもあった。
★ 金銭管理について提案し、本人も了承。週1回お金を届けに訪問し、その際、食材や
日用品の買い出しを一緒に行うことにした。
★ 療育手帳取得後、就労移行支援事業に見学・参加。ヘルパーも週2日入ることになった。
★ 通所から2年ほど経過し、グループホームへ転居。金銭管理の引継ぎと転居支援を実
施。グループホーム入居後も定期的に訪問した。
★ 金銭管理の方法がうまくいかず、施設側とトラブルになり、本人が転居。(緊急連絡
先に承諾なしに記載) ※入居後、不動産会社職員と会った際に発覚。
★ 再び繁華街で客引きとして働きはじめたが、トラブルになり再相談。金銭管理、買い
物同行を再開。
★ 本人が結婚することになり定期的な関わりは終了。現在も不定期ではあるが状況を確
認している。(現在は警備会社で働いている)
3. 事例紹介
22
事例 ⓬ 20代・女性・Lさん/10代・男性・Mさん
【背 景】 ⃝ 二人とも中学の時に、いじめを受けて不登校になった。
⃝ 父親から、姉は言葉の暴力、弟は、寝ているときにテレビを投げつけられ
るなどの虐待を受けた。
⃝ 姉・弟共に定時制高校に進学し、部活に入部。アルバイトをするが、給与
は全て、生活費にとられて、何のために働いているかわからなくなった。
定期を購入できないため、学校まで2時間程度かけ徒歩で通学することも
あった。教科書が購入できず、学校から母親に連絡することがあったが、
改善はなかった。
⃝ 姉は高校卒業後、ひきこもり状態になった。弟は、父の清掃会社で働いた
が、給与は全て生活費に充てられ、働く意味がわからなくなり仕事を辞
め、引きこもるようになった。
⃝ 高校卒業後、部活の顧問が二人の様子をみかね、NPOに関わる知人に相
談。当団体を紹介され来談。
【支援内容】 ★ 部活顧問と姉・弟で、来所。部屋を内覧し、一人暮らし体験事業の内容を
確認。利用開始日を調整。
★ 利用開始前日に新型コロナウイルスに感染したと連絡があり、回復後再調
整することになった。再調整後、姉・弟で荷物を持って来所。母親には行
き先を伝えてきた。
★ 別々の建物で過ごし、生活保護を申請。同じアパートで暮らしたいとあっ
ため、2部屋空いているアパートを紹介。
★ 生活保護決定後、転居。転居後も定期的に自宅を訪問(弟は不在なことが
多い)
★ 知人の紹介で、弟は訪問介護の仕事に就く。また、趣味の活動を再開し、
現在も活動している。
★ 姉は、アニメグッズの店や書店での就労を希望していたが、知人の紹介
で、コミュニティカフェでボランティアを開始。その後、弟と同じ職場で
働きはじめる。現在は、週2回のシフトに入りながら、友人たちとの交流
も再開。
★ 弟は、正社員として就職し、生活保護は廃止。会社の援助を受けて、運転
免許を取得。
★ 弟の父親に対する不信感は強いが、年末年始やお盆などの時には実家に
帰り、姉・弟共に、家族との交流を再開している。
23
事例 ⓭ 20代・女性・Nさん
【背 景】 ⃝ 小学生の頃から、父親から虐待(暴力やたばこの火をおしつけるな
ど)を受けていた。母親に何度か助けて欲しいと相談したが、状況
が変わることはなかった。妹は両親に愛されており、強い不満と
なった。
⃝ 専門学校に進学、一人暮らしを開始。学費や生活費はアルバイトを
して稼いでいた。
⃝ 高校の奨学金の請求が届き、両親に確認。時計の購入費用に充て
ていたとわかり、弁護士に相談。
⃝ 専門学校卒業後、飲食店で働き、店長となった。
⃝ 態度の悪い客も多く、何度かトラブルになった。ある時、激昂し人
格が豹変したことから、知人から精神科への受診を勧められた。
⃝ 激昂した件により、店を解雇になった。その後は、居酒屋で働きな
がら、知人宅に身を寄せていた。
⃝ 両親が知人宅をつきとめ、来訪。知人宅にいられなくなり、ネット
カフェで生活。
⃝ 新型コロナウイルス感染拡大により、居酒屋の仕事が激減したこと
やネットカフェがしまるという噂もあり、当団体への相談に至っ
た。
【支援内容】 ★ 相談の連絡を受け、車内で面談。そのまま、支援付き住宅の内覧を
行い、入居。
★ 入居後、生活保護の利用を勧めたが頑なに拒否。父親が乗り込ん
でくる可能性もあるため住所変更も拒否。
★ 入居後は個人事業主として生計を立てていたが、お客さんが利用
料を振り込まない時や遅れる時もあり、収入は不安定である。
★ トラブルが発生し廃業。家賃を滞納することが増えた。
★ 住宅確保給付金の利用について勧めたが、行政の支援は受けたく
ないと拒否。
★ 知人の店で就労を開始したが、フルタイムで働くことが難しく、生
活保護について説明。
★ 親へ連絡をしないことを条件に、生活保護を申請。
★ 生活保護を受給しながら、知人の店で自身の体調にあわせて就労
している。
3. 事例紹介
24
対応・時間 内容
1日目 85分
面談
事業説明
日用品等の提供
⃝職員が同行。利用する目的を聞くと、何も答えずうつむいたままだった。
⃝本人が生活用品を持ってきていたので、不足しているものを渡した。
⃝ゴミ捨て場、周辺のコンビニなどの説明
⃝ 疲れていたようで、休みたいので買い物など、今日はコンビニで済ませると
のこと
⃝ 明日の予定を伝えると、ありがとうございましたと話していた。
⃝ 口数が少なく、あまりコミュニケーションなどもうまくとれないと施設の方
も話していた。
2日目 70分
自室に訪問
起床の声掛け
買い物同行
見守り
⃝ 部屋へ訪問すると、あまり眠れていないようだった。昨日から食事は摂って
いないと話していた。
⃝ お昼前に買い物に行くことを伝え、お米などは?と聞くと、お米はあまり好き
じゃないですと話していた。
⃝ 買い物に行くと、何を買うとかはなく、食べたいものを買うと言っていた。
しばらく悩んでいたので、何なら食べられるかを聞くと教えてくれたので、
色々話しながら決めた。(焼きそば・食パン・チーズ・牛乳を購入)
⃝ 施設では、用意されたもので調理などをしていて、出されたものは食べる
が、食にあまり興味はない。
⃝ 一時間近い時間をかけ、買い物を終えると、楽しかったです、ありがとうご
ざいましたと話していた
3日目 70分
自室に訪問
起床の声掛け
⃝ 朝、部屋へ訪問すると、起きていたようで、すぐに反応があった。
⃝ 昨日購入した食材で食事は摂りましたと話していた。
⃝ 事務所の方で面談をし、こちらから、1日の生活の様子をチェックリストにし
てみたが、やってもらえるか聞くと、苦手なのでしたくないと言い、全てでは
ないが、こちらから聞き、記入しても大丈夫かと聞くと、それならまだいいで
すと回答。
⃝ 施設での様子を聞いたり、本人が思っていることなどを聞いたりしたが、あ
まり介入されたりも苦手なようだった。
⃝ 本人には、一人暮らしをしていく上で、何か1つでもできるようにしていけ
る、お手伝いをしたいので、今後、何かわからなかったり、話したいことがあ
れば、話してくださいと伝えた。
5. 関りの記録
44
対応・時間 内容
4日目 20分
自室に訪問
起床の声掛け
⃝ 今朝、声を掛けると、昨日もあまり眠れていなかったようで、少し前に眠れ
ていたようだった。昨日の様子を聞くため、入室すると、部屋に髪の毛が多
数落ちていたので、掃除機などかけるよう伝えた。
⃝ 昨日は昼食、夕食どちらも摂り、入浴もしたようだったが、見た感じは、きち
んと入ったのかな?と感じた。
⃝ ここ何日か微熱が続いていると言っていたので、熱を計ると、37℃だった。
⃝ 服用している薬は、きちんと飲んでいないようで、薬を飲むのが苦手、忘れ
てしまう、飲んでも飲んでなくても変わらないと話していた。(きちんと説明
を受けてない)
⃝ 話している途中から、立っていられなくなり、座っていたが、薬を渡しに行っ
た時は起き上がれず、ベッドに横になっていました。
(念のため、鎮痛剤と風邪薬を渡しておきました。)
5日目 110分 施設側に状況聞くため入電
⃝ 朝は起きられないわけではないが、ダラダラしていることが多い。
⃝ 就職先にいた期間、微熱が出ることが続いていたが、戻ってからは出なく
なった。
⃝ 薬の服用は自己管理ができないこともあり、管理をしていた。
⃝ 生理の時は症状が重く、1、2日寝込むこともある。
⃝ 体調が悪い時や生理が重いときは寝込むことが多い。
⃝ 一度、部屋に籠るようになると出てこないため、積極的に声掛けをしてい
た。
⃝ 入浴なども声掛けしないと入らなくなることがあり、毎日入るように言って
はいたが、本人はめんどくさくなると入らなくなることもある。
⃝ 一緒に買い物などしてきても、プリンやエナジードリンクなどになり、好き
嫌いも多くあり、出されたものは残さず食べていたが、好んで食べてはいな
かった。
⃝ 高校の時まで出来ていたことが出来なくなっている。
⃝ 入浴などを促しているが、それでも入らないときは「匂いがきつい、髪が汚
れている」などを言って入浴させていた。
⃝ 体調が悪い時などはほっておくこともある。
⃝ 自分で気が乗らないときは、頭が痛い、腰が痛い、お腹が痛い等、理由をつ
けて部屋から出ないこともある。
45
対応・時間 内容
6日目 80分
自室に訪問
起床の声掛け
眠れずにいたようで、あまり睡眠時間をとっていなかったらしく、会話をする
ときも座り込んでいた。何もせず、部屋に居て動かないのは、ただ居場所が変
わっただけなのでは?と伝えると、頷きましたが、一緒に部屋の掃除からやっ
てみないか聞くと、やりたくなさそうな顔をしましたが、(どうして掃除をする
のか)説明すると、理解してくれました。食事や飲み物の事を聞くと、食べるも
のはあり、飲み物がないからほしいと言っていて、一緒に行くか確認すると自
分で歩いて行くと言っていました。
土曜日に渡した薬は飲んでなく、原因がわからないまま熱が続くようであれ
ば、病院に行くことを伝えた。
7日目 20分
自室に訪問
起床の声掛け
微熱はあるが、今日はまだ良い方だと言い、雑談した時に自分の家族につい
て話をしてくれました。来た頃に比べ、話もしてくれるようになり、自分の思っ
たことを言うようになっていた。話を終えると、昨日は飲み物も買いに行けな
かったと言っていたので、今、体が元気なうちに買い物に出ては?と言うと、コ
ンビニに行くと言っていた。
今週中に掃除を一緒にしようと約束した。
【家族について】
⃝ 実家に来てほしいと母親から連絡がくる。
⃝ 母親は、弟が卒業したら、母親の実家に戻って、祖父と一緒に暮らそうと
言っているが、煮え切らない。
⃝ 実家は金銭面で余裕がなく戻るようなことがあれば、搾取されることにな
るので、あまり実家には行きたくない。
8日目 20分
自室に訪問
起床の声掛け
昨日と同じくらいの体調のようで、微熱はまだあるが土曜や日曜よりは良く
なっていると話していた。昨日、何か買い物に行ったか聞くと、飲み物しか買
わなかったようで、食べ物は先週のものがまだ残っているから買わなかった。
食べる量や回数も聞いているが、食料が残っているにしても、少し足りないの
では?と聞くと、大丈夫としか言わず、今日は食料を買いに行ったら?と伝える
と、この前行ったスーパーくらいには行ってみようかなと言っていた。
ここ何日か寒い日もあり、部屋のストーブを付けるように言うと、寒くはない
からと言いましたが、とりあえず、付くか付かないかの確認をしてくださいと
伝え方を変えると、わかりましたと返事があった。ストーブを付けた時と買い
物行くときにメールで連絡してほしいと伝えたら、きちんと連絡してくれた。
5. 関りの記録
46
対応・時間 内容
9日目 45分
自室に訪問
起床の声掛け
その他(対面)
昨日は外出し、帰宅は19時を回っていたようです。ご飯を食べ、本を買ってき
たと言っていました。
歩き回ったせいか、疲れている、足が痛いと言っていて、部屋の掃除を前日に
約束していたができませんでした。自分でも掃除をすると言っていたが、出来
ませんと言ってこなかったので、そういう時は自分からきちんと言わないとい
けないと言うと、わかりましたと言っていた。理由は、昨日、疲れていたが浴槽
にお湯を入れて入ったが、そのまま寝てしまったらしく、気がついたらお湯も
冷めてしまっていて、寒気もあるし、動ける体力はないとのことです。
話せないほどではなく、少し話をしました。
自分が来たのは、本意ではなかった。交換条件を出され、嫌だと言ったら、一
人暮らしに慣れるためと言われ、選択肢もなく来た。今後、どのように話が進
むのかを聞くと、よくわからないと言っていた。
今日は体を休めて、明日か明後日には掃除をしようと言うと、一緒にやります
と言っていました。
最後に、髪の毛の洗い方を伝え、ちゃんとできるか試しにやってみるよう話し
た。(入浴はしているが、髪の毛の洗い方が出来ていないようで、まだ匂いや
フケがあったので)
10日目
12分
自室に訪問
起床の声掛け
まだ疲れがとれていなく、だるさがあり微熱もいつもよりあると言っていまし
た。歩けないとかではないが、掃除はできないと話していた。昨日は食事が摂
れていなかったようなので、部屋でゆっくりしていること、食事は摂るようにす
ること、シャワーに入ったら、きちんと髪の毛を洗ってみること、を伝えておき
ました。
11日目
70分
自室に訪問
起床の声掛け
朝声をかけると、寝て起きたばかりだったようでしたが、10時になったら掃除
はできるか聞くと、たぶんできると言ったので、やることにした。部屋の髪の
毛やフケは来てからずっとそのままだったらしく、何度も繰り返しドライシート
で、一緒に取った。それだけやると、座り込んでしまったのですが、少し休んで
ホコリを取ってもらいました。取った髪の毛などを見ても、気になることがな
いようで、母親が自分以上に気にしたりしなく、当たり前に生活していた。施
設でも、自分の部屋の掃除を後から点検されることもないようだった。
土日、髪の毛をきちんと洗ってみること、冷蔵庫の中に余っているものがあっ
たので、なるべく退去前に食べきれるように食事は摂ることを伝えると、頑
張ってみると言っていました。
だんだんと自分の思ったことや話したいことを言ってくれるようになり、良
かったと思います。
47
対応・時間 内容
12日目
170分
自室に訪問
起床の声掛け
掃除
その他(対面)
朝、声をかけたときに疲れている様子があり、本人が昨日、色々とあり、イライ
ラしていると言っていた。聞いていた中で疲れそうなことは家族のことかと聞
くと、そうではないと言っていた。
10時頃から掃除をすることを伝えると、荷物の整理はしたので大丈夫ですと
言っていた。部屋の掃除をしに行くと、最初にイライラしていた理由を話し始
めた。
オンラインゲームでのやり取りで、何人かと関わっているが、その中で言った
言ってないなどもあり、やり取りしている時間も長く、関係性についても、しつ
こかったりなど、疲れたしイライラしていたと言っていました。
話すだけ話したら少しスッキリとしたようで、掃除を始めました。
やる個所を伝え、掃除道具を渡すと、きちんとしていました。
やりながらも、まだ話し足りないようで、先ほどの話をしながら手を動かして
いました。
自分が気になったところは集中的にしていました。
やり終えた時に、本人と戻ってからのことについて話をしました。
何からしていいのかわからない、話を聞いてくれるかどうか、などの不安もあ
るようでしたが、それでも、自分の思いは伝えること、ただ、説明や理由を言っ
てもらえず、そうした方がいいだけであれば、これから先、自分が住む場所だ
から、妥協するだけじゃなく、自分の思いや意見はわかってもらえるまで言っ
たほうがモヤモヤした気持ちになることが少ないのではないかと話した。
ここは、来ていい場所だから、選択肢の一つとしてあることを忘れないように
とも伝えた。
掃除が終わり、本人から「ここに来て書いた絵で一番上手く描けたやつ」だと
言って絵を渡してくれました。
こんなにきれいな絵を描けることができるのが凄いと言うと、嬉しそうにして
いました。迎えが来るまでの間、部屋で待つのかと思ったら、一緒にリビング
へおりると言ってきました。
最終日でしたが、初めて本人が下に行くと言ってくれた。
下に来て、他のスタッフとも雑談することもできていて、同じようなことを聞か
れても、きちんと答えることが出来ていました。最後の日ではありましたが、来
た時より話をしてくれるようになり良かったと思います。
★最後の振り返りで、感想を聞くと「自分にも居ていい場所があるんだとわか
りました」と話していた。
5. 関りの記録
48
│タイトル│ 「若者支援の難しさを考える」
│実施日時│ 2023年3月3日(金) 13時30分~17時00分
│開催方法│ 会場参加とオンライン(YouTube)参加による
ハイブリッド式
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=YVeny29AWQo&t=6s
│会 場│ 市民活動プラザ星園 大会議室
│参加人数│ 77名(会場参加34名・オンライン参加43名)
│プログラム│
【第1部】基調講演
★若者が自分自身の生活を実現するということ
講 師:札幌学院大学人文学部准教授 大澤 真平 氏
★当事者としての経験と支援者としての今
講 師:Youtube情報発信番組 THREE FLAGS ブローハン聡 氏
【第2部】検証会議中間報告
報告者:検証会議 座長 山内 太郎 氏
【第3部】パネルディスカッション
テーマ:「みんなの思う、若者支援とは?」
★パネリスト 札幌学院大学人文学部准教授 大澤 真平 氏
Youtube情報発信番組 THREE FLAGS ブローハン聡 氏
札幌地域若者サポートステーション 山名 徹 氏(検証会議委員)
札幌市ホームレス相談支援センターJOIN 山中 啓史 氏(検証会議委員)
NPO法人CAN 屋代 通子 氏(検証会議委員)
NPO法人コミュニティワーク研究実践センター 湯澤 真吾(検証会議事務局)
★コーディネーター 検証会議座長 山内 太郎 氏
6. 中間報告会
49
│内 容│
札幌学院大学人文学部准教授の大澤真平氏から、子ども期の
貧困の経験の背景にある「家族主義政策」や「ライフチャンス」
についての解説があり、その後インタビュー調査から見えてきた
子ども期の貧困の経験がどのような影響を与えるのかについて
説明があった。若者が自分自身の生活を実現するためには、
「(支援者の展望ではなく)自分の生活や人生をどのようにした
いかという、若者自身の欲求と展望が必要。」・「日常生活を自
身で“選択”して維持する経験そのものが重要。日常生活を提供
すること自体が極めて重要な支援である。」・「若者支援を入り
口に、その家族への支援も同時にアセスメントすることが必要で
は?」・「若者を受容する・安心していられる場所の提供は若者
との関わりに重要。だが、他者からの〝承認〟だけではなく、
〝同じ社会構成員としての対等な存在の承認〟がどう実現され
るのか、それが当事者には重要」とあった。
Youtube情報発信番組 THREE FLAGSのブローハン聡氏から
は、当事者として子どもの頃受けた虐待の経験や、子どもが
SOSを出すことがどうして難しいのか?について自身の経験に
基づき話があった。現在の支援者としての活動についても説明
があり、日常の会話の中での問題に気づくことや地域で連携しな
がら若者を支援できるネットワークが必要だとあった。また虐待
をなくすには、虐待をする親を責めるだけでは解決が難しく、
「親子まるごと支援」をする必要があるとあった。
検証会議中間報告では、ユースサポートハウス事業を利用し
た若者の事例や、検証会議の中で議論してきた若者特有の難し
さとは?若者自身が感じている難しさではなく、支援者側が感じ
る難しさではないか?と考えた経緯について説明。若者支援特
有の難しさについて、「支援が思ったように進まない難しさ」・
「本人の意向を引き出す難しさ」・「選択肢を現実的なものに出
来ない難しさ」3つの仮説を発表した。
パネルディスカッションでは、講師・検証会議委員が参加し、
「みんなの思う、若者支援」についてそれぞれの立場から議論し
た。若者支援の問題は、支援者だけではなく、社会全体で考えて
いく問題ではないか?と提案し終了した。
6. 中間報告会
50
│参加者アンケートから(回答数14)│
若者支援は表面的なものではなく、根の部分を考え、対応をし
ていく必要性を強く感じました。
子どもの成長期に家族主義ということを改めて痛感しました。
支援が必要な若者が、より良い選択をした経験がない、見通し
がきかないと話されており、思い当たることが多々ありました。
学校の教員をしていますが、話しの内容に共感出来ました。
若者からシンプルに声を聴く、そのような環境を作り、維持す
ること、大人では理解できない価値観のズレが決定的になる、
という考え方を聞き共感できた。
支援のひとつとして、若者のニーズにあった居場所づくりが大
切だと思います。
若者支援の難しさ、という表現がありました。ディスカッショ
ンの中でも何か議論も、モヤモヤ感が漂っていました。個人的
には、支援活動に何時もマトワリツク古くて新しい基本問題と
感じながら、聞いていました。率直に、若者という当事者に
もっと主導権を与えるシステムを考えることが大切に感じまし
た。
若者のインタビューから若者がどういう気持ちかがわかり、そ
れぞれの経験から社会の問題がわかりました。生まれ育った時
点で対等ではないと感じ、子どもでは何もできないという無力
感から希望が持てないのだと感じました。とても勉強になりま
した。
若者が衣食住のととのった環境よりもWi-Fiや携帯の所持を優
先する話題、とても興味深かったです。そこに理解を示し寄り
添おうとしている登壇者のみなさんのような支援者がいると
いうことが、若者にとってどれだけ安心できるだろう、と嬉し
く思いました。もしそこに理解を示さない方がいるなら、一
度、その支援者自身がWi-Fiのない環境、スマホやPC等を誰か
に預けて一定期間シェルターで過ごしてみると、仕事もままな
らず、誰かと連絡も取れない環境が体験できるでしょうし、
ネット環境・スマートフォンがいかに生活から切り離せないも
のか、身をもって実感できるのかなと思います。
10代 0人 0%
30代
1人
6%
40代
4人
25%
60代
3人
19%
70代
3人
19%
50代
3人
19%
20代
2人
12%
子ども・
若者支援機関
4人
37%
ホームレス
支援団体
福祉関係
2人
18%
不動産会社
2人
18%
民生委員
1人 9%
学生
1人 9%
1人
9%
とても満足
9人
65%
満足
2人
14%
やや満足
2人
普通 14%
1人7%
年 代 自由記述
所 属
満足度
51
│タイトル│ 「若者支援の難しさと必要な支援とは?」
│実施日時│ 2024年2月27日(火) 13時30分~16時30分
│開催方法│ 会場参加とオンライン(ZOOM)参加による
ハイブリッド式
│会 場│ 市民活動プラザ星園 大会議室
│参加人数│ 62名(会場参加28名・オンライン参加34名)
│プログラム│
【第1部】
★若者支援の難しさと必要な支援とは?
講師: 大谷大学社会学部コミュニティデザイン学科 講師 岡部 茜 氏
【第2部】
★検証会議報告
報告者:検証会議 座長 山内 太郎 氏
【第3部】
★ 一人暮らし体験参加者と考える、
「今」若者にとって必要な支援とは?
登壇者:20代・女性
進 行:検証会議 座長 山内 太郎氏
コメンテーター: 大谷大学社会学部
コミュニティデザイン学科 講師
岡部 茜 氏
7. 報告会
52
│内 容│
大谷大学社会学部コミュニティデザイン学科講師の岡部茜氏か
ら、「若者期の固有性や実践の課題」・「若者の生活を支えるために
必要なもの」という観点からの報告があった。若者の状況に応答する
難しさでは、例えばインターネットの重要性など世代的な価値観の
違いなどによるものや、支援側が期待する「普通へ戻る」という認識
が強い「普通」の基準から逃れられない若者支援の課題が指摘され
た。また、若者が魅力的と感じるパッケージが犯罪側に用意されてい
ることもあり、結果、若者が犯罪に巻き込まれることや搾取されるこ
とにつながっているとの指摘があった。若者の生活に必要なこととし
ては、「生きていくことができる」という安心感が重要であり、実際
に生きていく明確な手立てとして住居と食料と社会につながり続け
る手段(インターネット)の確保や、ここなら生きていけそう、この
人と関わってみたいという対象や場が大切で、居住支援の実践は大きな可能性があるともあった。
離家制度整備では、「個人所得のみから判定される、その他無条件の住宅手当」・「低家賃で住むことが
できる住宅整備」・「離家・その後の生活を支える事業を実施しやすくなるための制度整備」など提起され
た。また、「宿泊もできる安全な居場所」と「住まい」は異なるともあった。
第2部の検証会議報告では、座長の山内太郎氏から報告があり、2022年度の検証会議の内容を受けて、
2023年度はユースサポートハウスにWi-Fiを設置したことなど、実践についての報告があった。また2023
年度、4名の若者に対して実施したヒアリングから、本人から見えている「風景」を共有することの大切さが
見えてきたとあった。その上で、若者特有の難しさとは?「家族関係・家庭環境を背景にした難しさ」・「家
族主義的な価値観に伴う葛藤」・「公的な支援制度が無い」・「若者期の紆余曲折と葛藤」と4つの視点で説
明があった。一人暮らしに必要な能力とは?と議論を進めてきたが、能力ではなく環境が重要ではないか?
と説明し、「誰かが、“気にかけている”環境」・「一人暮らしを“経験”できる場(「チャレンジ」できる環
境)」・「調整力(妥協する力)折り合いをつける」と3つの観点から説明があり、検証会議で考えた若者に
必要な支援(施策)について提言した。
第3部では、ユースサポートハウスを利用している20代の女性にインタビューをしながら必要な若者支援
について考えた。母親との関係から家を出た時の話や、大学に相談しに行ったが支援の情報がなく、家に戻
るよう言われた時に悔しい気持ちになった、と話していた。支援スタッフと出会った時には、はじめは不安で
あったが、ユースサポートハウスに着くまでの車内で、色々と話すことで気持ちが和らいだとも話してい
た。家族関係が良くないことが負の部分ではあったが、そのおかげで色々な人と出会えたことは良かった。
家族という基盤が難しくても、人に相談しながら関係性の中で何とかなることがわかったので、卒業後も人
との関係性がを大切にしていきたいと思う、と話していた。必要な支援とは?一人ひとり求めている支援が
違うと思うので、一定程度の枠組みは必要だとは思うが、よく話を聞き、その人が必要としている支援を
「すぐ」に提供できることが必要だと思う、と話していた。
53
│参加者アンケートから(回答数18)│
当初は居住支援について知りたいと思っていましたが、居住と
いう分野を超えて、若者特有の支援の難しさについてじっくり
学ぶことができました。実際に一人暮らし体験をされた当事者
の話がとても参考になりました。
一人暮らしの体験参加者本人(若者)の実体験の生の話を聞け
たこと
若者が現実に一人暮らしをしたいと考えた場合、通常の不動
産物件だと相応の費用がかかり本人にとっての負担が大きい
ことから、生活基盤づくりに向けて行政と民間が横断的な取り
組みを行っていく必要があると感じた。
若者分野は確かに「ひきこもり」や「ケアラー」など、個別対
応が進展しているように思います。『「狭間」を産んでいるの
は社会運動側かもしれない』の一文にハッとさせられました。
家族に頼ることを前提として今まで考えてしまっていたことに
気づきました。
一人暮らしの体験ではなく、一人暮らしの支援として就労支援
の継続が必要と感じた。
一人暮らし体験を含めてすぐに住める支援は、ある程度地力
のある若者に効果的だと改めて思った。本人の特性や生育歴
でのダメージが強いと「逃げる」ことと「回復」が必要で、自
立はその先にあるように思えた。ただ、地力のある若者にこう
いったサポートがあるのは、本当にすごく大事だと思った。
どういった要因で若者支援が難しいのかよくわかった。
未成年後見人について研究して欲しい。
岡部先生のお話、共感する部分が多々ありました。就職を希望
する若者を若者サポートステーションから紹介して頂き、職業
訓練をしています。若者の離家を支える制度がほとんどないこ
とははじめて知りました。
家族との確執等で、家に居場所がない場合に居住支援が必要
であるが、支援するにしても速やかな対応が望まれていること
と、大学生の場合の学校側にも支援可能な手立てがあればと
感じた。
30代
5人
28%
60代
5人
28%
40代
2人
11%
50代
4人
22%
20代
2人
11%
就労支援機関
2人
11%
自治体職員
1人 5%
更生保護
1人 6%
生活困窮者
自立相談支援機関
4人 22%
子ども・若者支援機関
1人 5%
不動産会社
3人
17%
居住支援法人
3人
17%
その他
3人
17%
満足
2人
14%
普通
1人 7%
不満足 0人 0%
とても満足
9人
65%
やや満足
2人
14%
年 代 自由記述
所 属
満足度
7. 報告会
54
若者特有の難しさを考える上でライフチャートにも見られるよう、「子ども期」と「若者期」
は断絶された全く別の事柄ではなく、「子ども期」の影響を色濃く受け「若者期」につがって
いるという視点が重要である。同時に、その若者期は、新しい「家族」を築く、職場での中
核を担う、という壮年期に続いている。
今回、若者特有の難しさを考えるにあたり、検証会議で議論を重ね、若者自身からヒアリ
ングを行った。ヒアリングの中では、本人の視点で特に「子ども期」に経験したことや感じ
たことを聞くことが出来た(本人から見えていた景色)。また、本人が選ぶことが出来ない「家
族」・「家庭環境」の影響が、若者特有の難しさにつながっていること。「年輩者」が望む若者
に期待すること(施策)と、若者が期待すること(施策)に乖離があること。学校では当た
り前ではない「価値観」が大人社会では当たり前の「価値観」となっている、という社会側
の課題。若者の溢れるエネルギー、「若さ」が事態をより一層難しくさせているように見える
側面もあるが、若者から見た時の「特有の難しさ」とは、一体何なのか?について考えてい
きたい。
1)家族関係・家庭環境を背景にした難しさ
【ライフチャート】
ユースサポートハウス事業に参加した若者や若者への聞き取りから、子ども期の両親の離婚や再婚により、
「本人が必ずしも望まない」新たな家族との生活が開始され、家庭内での孤立や新たな家族からのイジメなど、
家庭内での居場所を喪失する若者もいた。家庭が安心で安全な場所では無くなった若者は、その後、安心
と安全を求めて家出を繰り返すなど、家族と距離をとり安全と安心を確保する傾向があった。また、学校卒
業後も、家庭内不和は継続し、家出を繰り返すなど継続しているケースもあった。世帯の経済状況としては、
必ずしも困窮していない若者も多い。そのため、シェルター利用後など親が介入し、援助する場面もあった。
しかしながら、家庭が本人にとって「安心」を確保されたものとはならなかった。
家族関係・家庭環境を背景にした難しさについては、様々な要因が複雑に絡んでいることや、必ずしも親
の離婚や再婚による同居家族の変化だけではなく、元々同居している親からの暴力や搾取、ネグレクト、も
しくは本人の親や兄弟への暴力や依存、非行などによる家族側の拒絶などもある。子ども期から継続する家
族関係や家庭環境の影響を「受け継ぎ」、若者期を迎えるという点で、若者特有の難しさである。
│はじめに│
8. 若者特有の難しさとは?
55
2)家族主義的な価値観に伴う葛藤
家庭内不和により家庭での居場所を喪失した若者の中には、親や兄弟に対しての拒絶から、ユースサポー
トハウスの利用につながった者もいる。しかしながら、一時は絶縁を希望する者もいるが、自身の安心・安
全な生活環境を手に入れることで、徐々にではあるが関係を回復し、再び交流をはじめる若者もいた。また、
経済的な困窮や親からの金銭的な搾取など家庭環境が劣悪と思われる若者の中には、劣悪な環境に取り残
される「親や兄弟」のことが気になり、一歩前に進めない若者もいる。ユースサポートハウスの利用につながっ
た若者も、「親に本当は認めてもらいたい」、「いつかは親に恩返しをしたい」など、親子関係で葛藤してい
る若者も多かった。自身を窮地に追い込んだ者は親であるが、子ども期の影響を色濃く引き継ぐ若者にとっ
て、例え親から理不尽な扱いを受けたとしても「親」の存在というのは重要であり、断ち切れない若者も多
い。親の影響が薄まっている中高年世代や親が亡くなっている高齢者世代とは大きく異なり、家族主義的な
価値観に伴う葛藤を抱えているという点は、若者特有の難しさであると考える。
3)公的な支援制度が無い
本事業期間中に大学生や専門学校生のユースサポートハウスの利用もあった。当初は、利用対象として想
定していなかったが、使える公的制度がほとんど無いという点において非常に難しかった。経済的自立に向
け生活保護を利用する若者も多いが、専門学校生や大学生はその活用が難しかった。また、若者を対象に
した施策は、少子化対策や就労支援とセットになっている場合が多く、若者期に特化した生活や住まいを支
えるための仕組みが無いことは、大きな課題である。当事者の声も反映された公的な支援制度が無いという
点において、若者特有の難しさであると考える。
4)若者期の紆余曲折と葛藤
経済力の強い世帯主が「子ども」を「支配」することが当たり前になっている。仕事をしないことや生活
習慣等への注意や家庭内規則(門限や宿泊等)を破ることで、再三注意をされることなどで関係悪化が顕
著になり、家出をした若者を保護することもあった。これは就労の場でも同様な姿勢が散見され、年長者に
よる若年者への理不尽な行動が多々ある。自立に向かい歩み出している若者は、既に自立を果たしている「大
人」より弱い立場になることが多く、その弱さに乗じて理不尽な要求をされことが多々ある。
家族から離れ、安心で安全な場を一度は手に入れるが、友人や支援者等との人間関係により再び、「安全
な場を失う」若者もいる。「安全」とは単に部屋があるというだけでない。本人が「今」望む生活を送るこ
とができているのかも重要である。多くの若者は、少し先の未来へ向け「なんとかしないといけない」・「こ
のままではいけない」という不安を抱えているが、そこと向き合う「タイミング」と今望む生活の実現は別
であり、「今」望む生活と経済的なバランスをとりながら、周りがどれだけ根気良く見守ることが出来るの
かが重要である。若者期の紆余曲折や葛藤の理解を得るのが難しいという点において、若者特有の難しさ
であると考える。
8. 若者特有の難しさとは?
56
【ユースサポートハウス(一人暮らし体験)、すぐに廃止したチェックリスト】
内容 チェック 備考(食事は食べたものを記入)
1 ビン・缶・ペットボトルを捨てる(8時30分まで)
2 朝ごはんをとる
3 朝ごはんの後片付けをする
4 歯磨き・洗顔をする
5 朝10時までに1F事務所に降りてきて前日
チェックリストを提出
6 昼食をつくる
7 12時から昼食をとる
8 昼食の後片付けをする
9 食材・生活用品を購入しに買い物へいく
10 夕食をつくる
11 19時から夕食をとる
12 夕食の後片付けをする
13 シャワーもしくは入浴をする 時間を記載( )
14 次の日の朝食の準備をする
15 燃えるゴミ、ゴミ捨て準備
16 チェックリスト・日誌の記録
○感想(困っていることなど記載)
本事業では、一人暮らしを開始・継続するためには、どのような社会経験・スキル・能力を
身に着ける必要があるのかについて、ユースサポートハウスで実践、検証会議での検証をし
てきた。その中で、「若者」の一人暮らしをどのように考えるのかが検討された。事業開始直
後、上記のようなチェックリストを作成し、事業参加者に記載を求めたが、生活が管理されて
いるようだと反発があり、チェックリストの活用を中止した。一人暮らしを望む若者は、自由
に暮らしたいため、管理をされたくないのである。
チェックリストの中止を受け、一人暮らしは「収入の範囲」で暮らしていくことが大前提で
はあるが、仕事をしながら、学校に通いながら、「自分のために」日々自炊・掃除・入浴をする
というのが果たして現実的なのだろうか?手続きや生活の中でわからないことが出てきた時、
病気や離職など危機的な状況に陥った時、自身の力だけで解決できる能力やスキルの獲得を
求めることが本当に必要なのだろうか?という疑問が生じた。ヒアリングに参加した若者の声
からは、「一人暮らしをはじめる時」・「一人暮らしをしている中」で、雑談などを通じて気軽
│はじめに│
9. 一人暮らしに必要な環境とは?
57
に相談できる環境についての話しがあった。
検証会議では、本人に能力やスキル・社会経験を求めるのではなく、若者が一人暮らしを
する時に必要な環境について、明らかにするべきだろうという結論に至った。今回、(1)~
(3)を重要な要素と考え、記載しているが(1)~(3)は、相互に作用することで効果が得
られものだと考えている。
1)誰かが、「気にかけている」環境
一人暮らしを開始する時や一人暮らし中、「何気ないこと」から「困りごと」まで、「気軽に話せる人」がい
る(環境がある)ということが重要である。生活破綻を起こした時には、支援が必要かもしれない。例えばカレー
ライスの作り方や掃除の便利グッズのお勧めなど、ちょっとした知識や経験を日常会話の中で相談できる環
境である。ユースサポートハウスの実践の中では、居室の設備の故障や冬季間不在にした際の水落しなどス
タッフが行ったほか、ユースサポートハウス修了者の自宅への訪問や電話、LINE などで生活状況を確認した。
(ほとんどは、雑談のような部類の内容である)
報告会でも若者からあったように、チェックリストに見られるような管理的なものではなく、生活の中に、
自身のことを気にかけている人がいる、困ったことがあれば相談できる環境が、一人暮らしをする中で「安心」
につながる。
また、支援的な視点で関わることも重要であるが、そのような視点に対し反発する・屈辱を感じる若者も
多いことから、「若者の望む」かたちでの信頼関係の構築が重要である。
2)一人暮らしを「経験」できる場(チャレンジできる環境)
一人暮らしを開始するには、入居費用や家具家電の購入など、スタートするための費用と一人暮らし後に
かかる家賃や生活費などがある。一人暮らしの破綻には、家賃や光熱費等の滞納、清潔保持が上手く出来ない、
ゴミ捨て、音量(騒音)、生活リズムの違いなどによる近隣住民からのクレームなど様々である。一人暮らし
が上手くいかず、住まいを失うことになると、金銭的な負担等は大きいものとなる。一人暮らしを「体験」で
きる仕組みは無いため、一人暮らしを希望する若者や学校卒業後、親元や施設等を離れ一人暮らしを開始す
る若者が、一定期間一人暮らしを体験し「失敗」や「成功」を体験しながら、本番に向けて一人で暮らすこ
とを学べる場は重要である。
学べる場は重要であるが、雑談の中での振り返りや確認をすることが大切になる。但し、場の提供だけで
は不十分であり、誰かが「気にかけている」環境と一体的に実施することが大切である。
3)折り合いをつける力
一人暮らし開始前や開始直後は、毎日掃除をして、毎日炊事をして、極端な節約をして、貯金を目標に掲
げる若者もいる。目標を達成するためには、無理をしても構わないと考える若者も多い。しかしながら、「暮
らし」は毎日のものであり、「働きながら」・「学校に通いながら」、炊事・洗濯・掃除を毎日するのは大変な作
業である。沢山貯金をしたいからといって、冬場ストーブをつけない、毎食、カップラーメンで凌ぐのでは、
体にも悪く、続かない。若者が生活経験の不足から、極端な目標を持つのは仕方ないが、生活を続ける中で
極端な目標設定は難しいと自覚し、修正していくことが大切である。生活破綻を「起こさない」、「自身の収入
の状況」を踏まえながら、自ら家事・生活リズム・生活費等と目標との折り合いをつけていくことが重要になる。
9. 一人暮らしに必要な環境とは?
58
│はじめに│ 今回の事業では、若者に一人暮らし体験の場を提供するユースサポートハウス事業と「若
者特有の難しさ」と「若者が一人暮らしを開始・継続するために必要な能力」を言語化する
ための検証会議を実施してきた。その中で見えてきた、今後必要な施策について、6つの視
点から提言する。また、若者の総合的な支援制度を目指す際は、親を「頼れるか頼れないか」
で対象者を決めると、「親を頼りたくない・拒絶している若者」が対象から外れることや「都市」・
「地方都市」・「町村」では、そこに暮らす人々の文化や意識が大きく異なる。そのため、若者
であれば誰もが享受でき、地域性を充分に勘案できる政策が必要である。
1)家族(親)機能の社会化
衣食住の提供と、若者が利用しやすいよう 2023 年度は Wi-Fi を設置、大幅な宿泊数の増加につながった。
衣食住の提供や Wi-Fi 環境等は社会側で準備しやすいものである。事業を利用した若者をみていると、親と
の関係がきっかけで家を飛び出し、困難な状況になっている者も多かった。家族には子どもが自立するまで
の期間、経済的に支えることや、自立に向けての大人としての助言や注意、仕事を辞める、病気になるなど、
緊急時の援助など様々な役割が期待されている。また、独り立ちした子どもの帰ってくることが出来る場所(帰
省先)の提供など、子ども期とはまた異なる重要な機能を担っている。一方で、関係性の悪化や養育能力や
貧困を背景に、これらの役割を担うことが難しい家庭も多く存在する。しかしながら若者期において、若者
が困難に直面した時に支える仕組みが不十分であることから、家族や親の支えのない若者はすぐに困窮状態
に陥ってしまう現状がある。そのため、若者期の家族や親の担ってきた役割について明確化し、それを社会
化する必要がある。
2)子ども・若者期を横断できる、誰かが、「気にかけている」環境づくり
事業利用者及びヒアリングを実施した若者の中には、子ども期に子ども食堂のスタッフや若者支援機関と
つながり、学校卒業後も関わりを継続している若者もいた。子ども期の家族関係の問題が、若者期に持ち越
されている者も多く、家庭という閉鎖的な場で問題は深刻化していた。今回、ユースサポートハウスに参加し
た者の多くは、子ども期に虐待やネグレクトを受けていたが、児童相談所への通報や介入があった若者はほ
とんどいない。子ども期の問題発見は学校・地域(周囲の大人)に期待されるところもあるが、虐待をはじ
めとした問題の把握は難しく、余程深刻化していないと児童相談所への通報まではつながらない。そのため、
子ども期から若者期に、横断的かつ敷居が低く関わることが可能な、家族・学校以外の「第三者」が、気に
かけている環境づくりが必要である。
3)就労・生活・交流・ボランティア活動など、幅広い相談(雑談)が出来る場所
ヒアリングの中で出ていた、札幌市の設置している若者支援施設のような、若者の仲間作りや交流、社会
参加、進路、仕事など幅広い相談が出来る場所が必要である。ヒアリングでもあったように、生活をする上
で、若者の抱える悩みというのは、大小様々にあり、必ずしも相談員を必要としないものも多い。また、「支
援」に対して拒否的な若者も多いことから、気軽に雑談の中で相談できる場所があるというのは、若者にとっ
ては心強い。
10. 提言
59
4)誰でも利用できる、一人暮らしを「学べる」場とその後の「住まい」の確保
一人暮らしを開始するには、入居費用や家具家電の購入など、スタートするための費用と、一人暮らし開
始後には家賃や生活費などがかかる。一人暮らしが上手くいかず、住まいを失うことになると、金銭的な負
担等は大きい。ユースサポートハウスでは、住まいを失いシェルター的に利用する若者も多かったが、ヒア
リングでは、すぐに一人暮らしを開始することに対して不安を抱えている若者もいた。一人暮らしとは、家
事全般を自身で行いながら仕事や学校に通うため、想像しているよりも遥かに負担がかかる。また、光熱水
費など「目安」については助言できる大人も多いが、生活リズム等に左右されるところも大きい。そのため、
自身で経験してみなければわからず、その中で、「生活のサイズ」を調整していく必要がある。
調整が上手くいかず、生活破綻を繰り返す若者もいることから、「経験」と「学び」と「気にかけている環境」
がセットになった政策が必要である。シェルター的に利用する若者も多いことから、その後の居住支援につ
いても考える必要がある。今回、大学生や専門学校生の利用もあったが、「住まい」を確保する段階において、
公的支援が無く、結果長期的な利用につながる若者もいた。そのため、学生も含めた「住まい」確保に向け
た支援について検討する必要がある。
5)若者がアクセスしやすい、経済的な支援
本事業の報告会において、登壇した若者から、レスポンスが早く(即時対応)、若者ひとり一人のニーズや
課題に対応できる柔軟な仕組みが必要であるとあった。若者支援においても、ヤングケアラーやケアリバー
等に代表されるように、対象者を限定した支援施策が実施されている。困った時に、「解決」を求め相談に
来ても、「相談現場」に実行力が無ければ、相談のみで終わってしまい、相談に来た若者には「解決されなかっ
た」「前に進まなかった」という思いが残る。そのため、アクセスしやすい「実行力のある資源」が必要である。
児童相談所等の支援につながらなかった 18 歳以上の若者の中には、進学を諦めざる得ない者や大学や専門
学校に通っている中、親との死別等により経済的に困窮する若者とも出会った。「親」を対象にした経済的な
支援施策は多いが、若者本人が恩恵を受けることが出来ない事例もあった。そのため若者本人を対象にした
アクセスしやすい給付型の経済的支援が必要である。
6)若者を支えるための事業を実施しやすくする、
支援団体への財政的な支援
若者支援を行う団体が、全国各地で活動している。しかしながら、若者の抱える課題は多岐に渡るため、
その全てに答えるのは難しい。また若者との関係性の構築には相性もあるため、関係構築が難しい場合は、
つながらない・拒否されることもある。また、支援団体の取組みも多種多様にあり、若者のニーズとのマッ
チングが重要になる。
若者ニーズの多様性や関係構築の難しさを考えると、それぞれに地域に多様な支援団体が存在するのは非
常に重要であると考える。現在、就労支援や居場所支援を中心に若者支援は進んでいるが、行政から支援を
受け活動を担保されている団体は少ない。また、国の政策として支援策を策定しても、地域の若者ニーズを
つかめず、取り組みに至らない自治体も多い。
居住支援法人への支援のような都道府県から指定を受けた団体自らが、直接国の補助金に応募できるよう
な仕組みが必要であり、そのような取り組みが、全国各地に、様々な若者支援を広げると考える。
10. 提言
60
生活困窮に関わる課題を持つ若者を対象に一人暮らし体験事業(ユースサポートハウス事
業)を実施し、そこでの実践報告をもとに支援の難しさや若者に必要とされる能力を検討、
言語化する。2 年間にわたって行われたこの取り組みの具体的成果は本報告書に記載のとお
りだが、今もなおユースサポートハウス事業のような取り組みを必要とする若者がいる以上、
私たちは引き続きこの課題について考えていかなければならない。その意味では今回で満足
のいく結論が出せたなどと言うことはできないのだと思う。
とはいえこれまでの議論からあらためて大切だと思わされたことがいくつもあり、その意
義は大きかったことは強調しておきたい。やはり「大きな話」は避けて通れないのだなとい
うこともその一つだろう。例えば「家族」という存在をどのように考えるか。
若者が自立していくまでには失敗を含めた様々な経験が必要であることに異論はないと思
う。ただその経験は、何かあれば家族がフォローするものという了解があって成り立っている。
本報告書に登場した若者の支援の難しさは、彼ら自身の経験の少なさに由来する場合が多かっ
たが、それは彼らの家族がその機会を十分に用意できなかったということでもある。家族の
状況で若者の今の生活や将来展望が大きく異なる。これは社会的養護の問題や子どもの貧困
の議論と全く同じ構図だ。そしてより射程を広げると、それは高齢者や障害者の介護・介助
問題にも当てはまるだろう。この社会には家族による私的な扶養を前提とする価値観が広く
浸透しているが、それが必要な制度の整備を阻んでいる可能性について、私たちはもっと関
心を持つ必要がある。
同時にそれが人々の心情的側面を規定していることにも注意を向けたい。彼らの多くは家
族(親)を見捨てるわけにはいかないから家族と暮らし続けなければならない、と語っていた。
彼らのアルバイト代は将来への貯蓄ではなく、家族と暮らすための家賃や食費でほぼ消えて
しまうという現実があった。これも近年指摘されて久しいヤングケアラーの問題と同じ構図
といえる。一般的に愛情に満ちた家族が互いに支えあう姿は美しいものである。しかしその
家族愛ともいうべき価値観は、しっかりと彼らの足を縛っているのだ。
ではどうすればよいか。待ったなしで支援が必要な若者がいるにもかかわらず、この事業
を通して言えることがあるとすれば、それは結論を急ぐべきではないということだろう。ま
ず大切なのはじっくりと彼らの声を聴くことだ。彼らを「支援が難しい」「なかなかこちらの
言うことが伝わらない」と評価する前に、彼らの声に耳を傾ける。本報告書の内容を踏まえ
るならば、それも待ちの姿勢ではなく、こちらから教えてもらいにいく構えが必要だ。そして
子どもや高齢者、障害者など近接する他の領域とも共闘して議論すること、互いに関心を持っ
て交流することなのだと思う。「そんなことわかっている」と言われるかもしれないが、今の
私たちはそれがしっかりと出来ていると言えるだろうか。
この事業自体はここで終了するが、満足のいく結論に近づくためにも、ここで得た知見を
さらに発展させて取り組みを継続していく必要がある。
検証会議
座長 山内 太郎
│おわりに│
11. 終わりに
61
2022年度
ユース
サポートハウス
のチラシ
2023年度
ユース
サポートハウス
のチラシ
12. 資料
62
63
2022年度・2023年度 中央共同募金会 赤い羽根福祉基金
ユースサポートハウス事業報告書
孤立している若者、困難を抱えている若者に対し
一人暮し体験の場を提供すると共に、その実践を通して、
一人暮しに必要な能力と若者特有の難しさを明らかにするための活動
2024年3月発行
[発 行]
特定非営利活動法人コミュニティワーク研究実践センター
〒064-0808 札幌市中央区南8条西2丁目5-74 市民活動プラザ星園
TEL 011・511・1315 / FAX 011・511・1316
https://cmtwork.net/
[制 作]
検証会議委員
[編集協力]
ユースサポートハウス事業に参加された
